治療

口唇ヘルペスや性器ヘルペス、角膜ヘルペスの場合、症状が軽度であれば外用での治療を行います。重症度によっては内服薬での治療を開始する必要があり、早期に改善させるためには内服薬を選択する必要があります。
ただし、角膜ヘルペスの場合には、内服は適応外使用となる例もあります。外用薬の効果は皮膚表面にのみ作用するため、免疫力が低下している場合にはウイルスの増殖を抑制する効果が弱く、改善できない場合もあるのです。外用薬を使用して7日間で症状の改善が見られない場合には、そこから内服薬などの別な治療に切り替える必要があります。
一般的に、外用薬と内服薬が同時に処方されることは保険請求上問題があるため、どちらかのみを用いて治療していきます。

帯状疱疹では内服薬での治療を行います。強い痛みを伴うことが多いため、鎮痛剤を併用することもありますが、神経を直接刺激されている痛みの為、一般的に効果が薄いものです。発熱を伴っている場合には、併用を避けるべき鎮痛剤もあるために注意しましょう。疱疹が消えた後でも、神経障害による痛み・しびれが持続する場合もあり、その場合には神経痛に対する鎮痛剤や、神経を修復する効果を持つビタミン剤を継続することもあります。

小児の水ぼうそうでは、軽度であることがほとんどであるため、あえて抗ウイルス薬を使用せずに、自然治癒を待つことが一般的です。成人の場合には重症化しやすいため、内服薬を使用していきます。

主なヘルペスの治療薬

・ゾビラックス眼軟膏(一般名:アシクロビル):角膜ヘルペスに用いられる外用薬。目に入れても問題が無いように調整されています。下瞼の内側に軟膏を塗布し、目全体に行きわたるように瞼の上からマッサージしたり、まばたきなどで外用を塗り広げます。

・ゾビラックス軟膏(一般名:アシクロビル):口唇ヘルペスや性器ヘルペスなどの単純ヘルペスに用いられる外用薬。状態に応じて塗布回数を増減して用います。

・アラセナA軟膏・クリーム(一般名:ビダラビン):ゾビラックスとは作用機序が異なり、直接ウイルスのDNA合成を阻害する効果を持っています。ゾビラックス外用よりも効果的という研究報告もありますが、大きな有益性の違いはありません。単純ヘルペスだけではなく、帯状疱疹にも適応を持っています。

・ゾビラックス錠(一般名:アシクロビル):ヘルペスに作用する内服薬では、最も安価な製品となりますが、経口での吸収率が悪く1日5回の服用を必要とするため、使い勝手は悪くなっています。適応症は単純ヘルペス・帯状疱疹の双方にあります。

・バルトレックス錠・顆粒(一般名:バラシクロビル):服薬後に体内で代謝され、アシクロビルとなって効果を発揮します。ウイルスのDNA合成を阻害し、増殖を抑制する効果を発揮します。単純ヘルペス・帯状疱疹・水ぼうそうなど、すべての症状に対して適応を持っています。近年、ジェネリック医薬品も発売されました。性器ヘルペスの再発予防に適応を持つ唯一の医薬品です。

・ファムビル錠(一般名:ファムシクロビル):バルトレックスと同等の効果を持ち、単純ヘルペスと帯状疱疹に適応を持っています。

・アメナリーフ錠(一般名:アメナメビル):抗ヘルペスウイルス薬のなかで、唯一1日1回の服薬で済み、ウイルス増殖に関わるDNA合成阻害機序が異なる医薬品です。他の医薬品よりも有益性が高く、適応は帯状疱疹のみとなっています。

治療期間

ヘルペスの治療期間は、内服薬での治療でも外用薬の治療でも、発症からおおよそ7日間程度となります。治療を行っていれば、性器ヘルペスでも口唇ヘルペスでも、治療期間に大きな違いはありません。
治療はウイルスの増殖を抑制するためのものであるため、治療開始が早いほど軽症で経過します。

治療開始から3~5日程度で痛みも落ち着き始め、徐々に回復していくでしょう。5日程度経過しても全く改善しない場合には、ヘルペスの他にも何らかの疾患を合併しているか、感染症を併発している可能性があるため、治療を見直す必要があります。痛みなどが緩和していても、疱疹が残っている場合には感染性が残っているため、処方がある期間はきちんと治療を継続しなければいけません。

角膜ヘルペスの場合、治療にかかる期間は2週間程度となります。再発しやすいものであるため、治療の終了間際に再発して、そのまま継続する難治症例も存在します。角膜ヘルペスの場合、その治療は主に外用が主体となってしまうため、治療期間も長くなってしまう例が多いようです。

水ぼうそうの治療期間は、個人の体質が関係する部分ではありますが、おおよそ発症から5~6日で症状は改善し、感染性もなくなります。かゆみなどが気になる場合には、その症状に合わせて医薬品を使用していきます。
小児の場合では軽症となることが多いため、無治療で経過観察することが一般的です。成人の場合には重症化することが多いため、抗ウイルス薬の内服治療を初期から実施します。その場合でも、治療期間は同様に5~6日が想定されます。

帯状疱疹の治療期間は、おおよそ7日間となっています。内服薬を早期に使用している場合には、3~5日で痛みなどの症状は緩和していき、徐々に疱疹も消えていきます。
無治療の場合には長期化してしまい、治療期間は大きく前後します。疱疹が消えた後にも傷害された神経からしびれ・痛みが持続的に発生することが多いため、疱疹がなくなっても神経障害に対する治療を継続しなければいけない例が多くなります。
数年に渡って内服薬を継続することもあるため、その期間まで治療期間に含めれば、非常に長い期間となってしまいます。

放置して自然に治る?

口唇ヘルペスや性器ヘルペスは、実はこれといった治療をしなくても、軽快・改善します。発症要因が免疫力の低下によるものであるため、免疫力が回復すればそれに伴ってウイルスの増殖が抑制され、自然に回復するのです。無治療でもおおよそ発症から2~3週間で状態は改善していきます。ただし、治療をした場合には数日で症状が軽快し、7日程度で回復するため、無治療では明らかに治癒にかかる期間が長くなってしまいます。回復するまでの辛さは、比べるまでもないでしょう。

また、無治療では重症度によっては疱疹の痕が残ることもあります。再発する可能性が高くなるという報告もありますが、それに関しては具体的な情報はありません。無治療ではウイルスを周辺に排出する期間が長くなってしまうため、治療中よりも感染者を増やしてしまう可能性が高まります。

角膜ヘルペスも単純ヘルペスの一種ですので、同じく無治療でも改善することはあります。ただし、角膜ヘルペスといっても、表面に症状があるのか内部に症状があるのかによって、治療の方針が異なります。内部に症状がある場合には角膜の変性(黒目が白く濁るなど)が症状としてあるため、ヘルペスウイルスの感染がなくなったとしても、変性が進行していれば視力の低下が起き、回復しないことがあるのです。失明してしまう危険性も高いものですので、角膜ヘルペスを放置するのは決して勧められるものではありません。

水ぼうそうでは小児期の感染が主で、症状が軽いものが多いため、あえて治療をしない場合が大半です。成人になってからの感染では高熱や痛みなどを伴うことがあるため、状態によって治療を行います。治療しなくても症状が改善はしていきますが、当然その治癒に掛かる期間は長くなってしまい、苦しい期間が2~3週間持続します。

帯状疱疹も同様に、治療することなく改善する例もあります。帯状疱疹では、どの部位に発症するかによって痛みや発熱などの随伴症状が大きく異なります。背中に出た場合ではむずがゆさを感じる程度となることが多く、自分自身で症状を目視できないこともあるため、治療せずに終わる例が多くなります。頭部に症状が出ると、非常に強い痛みと発熱を伴い、睡眠もまともに取れない状態が続くため、治療をしなければ免疫力の回復が見込まれず、どんどん悪化していくこともあります。
また、帯状疱疹が目の付近で発症した場合、角膜ヘルペスの症状を併発してしまい、視力の低下・失明を引き起こしてしまう危険性があります。