バルトレックスはヘルペスウイルスに効果を発揮する抗ウイルス薬です。使用できる疾病(適応症)は単純疱疹、帯状疱疹、水痘、性器ヘルペスの再発抑制のほか、造血幹細胞移植における単純ヘルペスウイルス感染症(単純疱疹)の発症抑制にも使用できます。
単純ヘルペスウイルス感染や、水ぼうそうや帯状疱疹の原因になる水痘帯状疱疹ウイルス感染に対して用いられており、症状によって用法用量が異なります。

口唇ヘルペスや性器ヘルペスなどの単純ヘルペスでは、1日2回1回500mgを使用します。状態によって服用期間は前後しますが、おおよそ7日間の服薬が治療には必要です。
角膜ヘルペスも単純ヘルペス感染に分類されますが、保険適応上ではバルトレックスが選択されることは難しくなっています。角膜ヘルペスでバルトレックスを使用する場合には、服用する用量は単純ヘルペスの治療と同じ1日2回1回500mgですが、服用期間は14日間程度まで延長されることがあり、難治症例の場合にはさらに継続した服薬を行う場合もあります。

水ぼうそうの治療でバルトレックスを使用する場合、標的になるウイルスは水痘帯状疱疹ウイルスであるため、単純ヘルペスに対する用量よりも多く使用する必要があります。1日3回1回1000mgの服薬が必要となり、状態によって服用期間は前後しますが、おおよそ7日間を目安に服薬します。

ただし、小児の水ぼうそうでは、症状が軽度であることが多いため、無治療で経過を観察することがほとんどです。水痘帯状疱疹ウイルスが再発を起こした場合、帯状疱疹として症状が現れます。この場合でも、用法は水ぼうそうの治療で使用したものと同じ1日3回1回1000mgを服薬します。治療期間も同様に、7日間を目安に服薬を継続します。

バルトレックスの効果は、ウイルスのDNA合成を阻害する作用によって発揮されています。ウイルスのDNAにのみ反応し、人間のDNAには作用しない特異性を持っているため、副作用が少なく安全性の高い医薬品だと言えるでしょう。発生しやすい副作用は頭痛・下痢・腹痛・眠気となっており、精神神経症状と消化器症状に注意が必要です。

バルトレックスは腎臓から排泄されるものですので、水分を多めに取ることが必要になります。水分摂取量が少なければ、体内にバルトレックスが過剰に蓄積してしまうことがあり、その場合には副作用が起きやすくなってしまいます。腎機能が低下している人では副作用は起きやすくなるため、高齢者では特に注意が必要です。

併用してはいけない医薬品はありませんが、腎臓から排泄される経路が同じ医薬品や、腎臓からの排泄を抑制するような医薬品では、副作用が起きやすくなるために注意が必要です。

バルトレックスは商品名であり、一般名(成分名)はバラシクロビルです。バラシクロビルは体内に取り込まれるとアシクロビルに代謝で変換され、このアシクロビルが抗ヘルペス効果を発揮しています。アシクロビルは、商品名ゾビラックスに用いられている成分と同じものです。

同じ成分であるにもかかわらず、経口摂取した時のバルトレックスとゾビラックスでは、明らかにバルトレックスに有意差が存在します。こういった直接薬効のある成分ではなく、成分の代謝された物質が効果を発揮するように設計された医薬品を、プロドラッグといいます。
プロドラッグとする理由は副作用の軽減だったり吸収性の改善だったりと数多く存在しますが、バルトレックスをプロドラッグとしているのは、吸収性を改善するためです。薬効があるアシクロビルをそのまま服用するのではなく、あえてプロドラッグとした理由は、アシクロビルの吸収の悪さにあります。

アシクロビルのままでは経口摂取しても30%程度しか体内に吸収されないため、治療に用いるには非効率的となってしまいます。
そのため、よりスムーズに吸収でき、薬効を発揮できるように改善したものがバルトレックスなのです。ゾビラックスに静脈注射製剤があり、バルトレックスには経口製剤しか存在していないのも、この吸収性に起因しています。ゾビラックスは経口摂取しても吸収されづらく、速やかに十分な効果を発揮するためには、直接薬剤を静脈注射するしかありませんでした。

バルトレックスの効果は、代謝されたアシクロビルが発揮しているものであるため、あえてバルトレックスの静脈注射製剤を用意する意味がないのです。

バルトレックスは副作用も少なく、良好な効果が期待できる医薬品ではあるのですが、価格が高いことで治療に関わる負担が大きいことが問題として存在しています。ただし、現在はジェネリック医薬品も発売されているため、価格上の問題点は解消されたといっても良いでしょう。

バルトレックスの薬価は1錠375円程度ですが、ジェネリック医薬品ではメーカーによって1錠155円のものも販売されています。ジェネリック医薬品では効果に不安があるという場合には、添加物や加工方法まで先発医薬品と全く同じ構成であるオーソライズドジェネリック(略称:AG)も販売されています。